第41回日本SF大会
ゆーこん レポート

大野万紀

会場(の一つ)ホテル玉泉


 2002年7月13日(土)〜7月14日(日)の2日間、島根県の玉造温泉にて、第41回日本SF大会、ゆーこんが開催された。ぼくは新大阪からの専用バスで出発。集合場所がちょっとわかりにくかったが、無事に乗車。北野勇作さんと隣の席になる。五代ゆうさんもいた。バスの中では誰かが持ち込んだ自主制作映画のビデオ上映。あんまりちゃんと見えなかったのだが、中でプラレールを使った列車大爆破の映画がマニアックでとても面白かった。さて途中サービスエリアで食事をしたり、けっこうのんびりとバスは進んで、松江に着いたのは3時ごろだった。ちょうど台風の影響の大雨の中。どうなるかと思ったが、ホテルに着いてしまえばどうということもなし。ホテル玉泉は、大きくてりっぱな観光ホテルだった。

野尻抱介さんは「ふわふわの泉」で日本長編部門受賞 星雲賞受賞者の(代理含む)みなさん

 まずは開会式と星雲賞授賞式。ぼくが入った時は、開会式はもう終わりかけ。何だか見知った人が多いのだが、何をいっているのか聞き取りにくい。今年の星雲賞は開会式で、大広間での授賞式だ。前の方に陣取って写真を撮ったのだが、このデジカメ、どうももう一つだなあ(とデジカメのせいにする)。受賞作品と受賞者は以下の通り。

 『プラネテス』の受賞について、レギュレーション上の問題が指摘されていたようだが、今年の結果は総じて納得のいくものじゃないだろうか。パット・マーフィが意外? そうでもないでしょ。しかし、ついにわがSF研から星雲賞作家誕生だ。めでたいめでたい。

ファンジン大賞受賞者(代理含む)のみなさん

 続いてファンジン大賞。ここではTHATTA会員でもある古沢嘉通さんReview IKAが翻訳部門と大賞のダブル受賞。菊池さんが代理で受賞していた。まあ、これは本人も狙っていたことでもあるし、内容からいっても妥当なものだと思う。でもこれを機会に読みたいと思った人がいても、とっくに完売していてどうしようもないものねえ。それでも一般販売したReview IKAはまだいい方で、今回のファンジン大賞部門賞を取った中には、十数部しか作ってなくてはじめから幻のようなファンジンもあったと聞く。そうなると、SF大会に来ているような一般のファンには無縁のもんだわなあ。

 同宿する水鏡子を見つけ、部屋に荷物を入れる。同宿は水鏡子の他、電撃やファミ通文庫に書いている葛西伸哉さん、架空戦記の横山信義さんだった。開会式の後は夕食まで何もないので、とりあえず4人で話をする。架空戦記のことはよくわからないので、ライトノベルの話が中心だ。水鏡子と葛西さんが主にしゃべって、ぼくと横山さんはどちらかというと聞き役。ライトノベルはアニメのように読める小説というコンセプトが重要で、ダーティペアがそのスタートであるといった内容だった。

玉泉の夕食 食事風景

 さて、食事。まあ、何といっても温泉旅館の宴会食だが、確かに豪華で量も多い。ステーキもついていて満足。ここで安田均さん、水鏡子、津田文夫さん、桐山芳男さん、大森望さんら、往年の海外SF研究会(KSFA)メンバーが何となく集まり、食後の昔話。ゲーム業界で大活躍の安田さんだが、今でもSFの原書をちゃんと読んでいるそうだ。ヴィンジが面白いとか、イーガンがいいとかで意気投合する。場所をラウンジへ移してさらに雑談。今年は企画が二つの旅館に分かれていて、移動がめんどうなこともあり、企画にはほとんど参加せず、ラウンジでひたすら同窓会気分で話をしていた。いわゆる顰蹙なSFゴロのパターンだが、まあたまにはいいでしょう。

ラウンジでテルミンを演奏する菊池誠さん ディーラーズルームの都築由浩さん
ディーラーズルームに小松左京さん現わる ゆーこん亭で何やら邪悪な雑談をしている人たち
志村くんの折り紙コーナーも健在です ミラーグラスでサイバー(?)な菊池さんと巽さん

 ラウンジで菊池さんのテルミンを聞いたり、菅浩江さんや田中啓文さんと色々な話を聞いたりして過ごす。アベノ橋魔法商店街で大阪弁リライトって何をするの?と聞いたのは田中啓文さんと田中哲弥さんを取り違えたぼくの大ポカ。本当にごめんなさいね。啓文さんは、タダ同然の仕事が山のようにあって、今年の大会も金がないから来るつもりじゃなかったとのこと。でも星雲賞受賞なんだから来なさいと、菅ちゃんに強く進められ、取材も兼ねてやって来たのだそうだ。ディーラーズ・ルームにも顔を出して見たが、いつもならディーラーズに集まる古手が、今年はラウンジでたむろっているので、ゆったりのんびりとした雰囲気だった。他にもゆーこん亭と称する、酒飲みながら車座になってだべる広間があって、ここでは小林泰三さんや北野勇作さんらが延々と何やら邪悪そうな話を続けていた。志村くんの折り紙コーナーも健在でした。ラウンジに戻ってみると、巽孝之さん、小谷真理さんが菊池誠さんと雑談。サイバーパンクパネルに使ったというミラーグラス(の偽物)をつけて写真をとる。

SFとコミケの部屋 ラクガキ王国の部屋

 ちょっと遅くなったけどせっかくの温泉なので風呂へ。人が少なくて気持ちがいい。露天風呂にも入る。曇り空だったが、温泉気分を満喫。それでも何か企画を覗こうと、水鏡子と「SFとコミケ」の部屋へ。米澤嘉博さんやその他SF大会でよく見かけるコミケの面々と、昔のSF大会の話などをしている。色々と規制が厳しくなったらどうするかという質問に、コミケは運動だからどんなやり方でも継続する、例えば船を出して公海上で開くとか、何百カ所に分散して行ったとしてもそれがコミケだとか。うーん、この人らはやっぱりあの時代の精神を持ち続けているわけだわ。色々とコミケの裏話が聞けて面白かった。後は長谷川裕一さんのラクガキ王国の部屋なども見たが(ぼくもこのソフトもっているけど、こんなすごい絵が描けるのねー)、4時前には部屋に戻って寝た。

朝食(玉泉)

 7時に起きて朝食。これがまた朝食とは思えない豪華版。今日も食事の後は閉会式のみなので、ラウンジでだべる。さて閉会式はきのうと同じ大広間。まず小谷真理さんらによるジェンダー研の、センス・オブ・ジェンダー賞勝手に授賞式。スカーレット・ウィザードが受賞していたが、企画の方に出ていないので、趣旨がよくわからん。続いての暗黒星雲賞授賞式は、なかなか面白かった。自由部門は「雨」、企画部門は玉泉が「夕食」松の湯が「女将」。ゲスト部門はNASDAの野田さんだった。石飛さん提供の椎茸の「ほだ木」が副賞で、でかいのでみなもらって難儀しそう。その他野田元帥のNASAのベビー服プレゼント、ゲスト・オブ・オナーの豊田有恒さんの言葉などがあって、閉会式も終了。飛浩隆さんの司会が心がこもっていて良かった。来年のSF大会(栃木)のプレゼン中に会場から参加費が高くなったことへの質問があったが(でも3万円台といっていたのが4万ちょうどになったのを公約違反というかねえ)、まあ混乱はなく無事に終わった。企画という面では物足りない部分もあったが(会場が2つに分かれていてそのアクセスにもうひと工夫が必要だったように思う)、地方大会としては理想的に近い大会だった。帰りのバスはさすがにみな爆睡。どうもごくろうさまでした。

閉会式の大広間 センス・オブ・ジェンダー賞授賞式
暗黒星雲賞を受賞した松ノ湯の女将さん ゲスト・オブ・オナー豊田有恒さんの言葉

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