岡本家記録とは別の話(SF者すごろく篇)

岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。6月は『歌の翼に』、『ルーキー』、『約束の地』、『異星人情報局』、『北野勇作どうぶつ図鑑05-06』、『死なないで』 。7月は『プレシャス・ライアー』、『500年のトンネル』、『海を失った男』、『しあわせの理由』などを収録。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

SF者すごろく

  いつの間にか1ヶ月がすぎ、先月はパスしてしまいましたね。もはやSF大会も終わって、梅雨もあけ(この順序は感覚的におかしいけど)、阪神のマジックは40を切り(あれ、あんな人までという人が阪神ファンを表明しています。勝ち馬には乗らねば)、THATTAはある時払いの催促なしなので、気がつかず。ということから、2ヶ月ぶりの掲載になります。

  「本の雑誌」(6月号)の“SF者特集”は、メンバーが偏っていますね(と指摘するまでもないが)。プロがアマチュアの活動に言及するというのも、ちょっと変。しかし、コアなファンがそのままプロ化したメンバーという事情もあって、そのあたりの境界意識はあまりないようです。そもそもSF者(現在中年以上老年以下世代)の人生とはいかなるものか。

 分岐点1:親が本好きで家に多数の本がある。
 分岐点2:学校の図書館に面白そうな本がある。
 (→本の内容にもよる。これは単なるスタートライン

 Xはその本を読みふけるが、気に入ったものというと、ミステリ/ホラー/SFと呼ばれる内容だった…。
 本がない生活では、そもそも活字SFとの接点がないでしょう。学校に入って本=教科書と教育されてからでは遅い。2の場合でも、本好きでないと無理ですね。

 分岐点3:本屋で新しい本を探す。見つかるのがSFXXXXと書いてあるような専門誌。
 (→専門誌というのは、少なくともマニアの道の入口ではある

 あるいはXXSF文庫と呼ばれる大人向け叢書。親の本/図書館の本は、なんといっても古い内容なので食い足りない。自分の所有物として、大人の本を購入する快楽を覚える。この場合、中途半端はいやで「コンプリート好き」(日本人に多いらしいある種の完全主義)に目覚めるとコレクターに…。
 (→以下に関わらず一生本を収集して終わる(注)

 分岐点4:一般のSF同好会/ファングループにはいる。
 (→プロを目指すなら、最近はお勧めできないコース
 分岐点5:学校のSF系同好会/研究会にはいる。
 (→以下一生本も読まず一般人になって終わる

 長じて、中学/高校で文藝クラブ系を探すが、そこに居る連中とは好みが合わない。大学に入るとSF研究会を発見、入部を果す。しかし、研究会とは名ばかりで、雑談と宴会/ゲーム(各種)に明け暮れる日々…。

 分岐点6:ファンジンを出す。
 分岐点6-1:創作をする。
 (→プロになれないと脚光を浴びない(注2)
 分岐点6-2:翻訳をする。
 (→最近は競争相手も多い。アマのままなら紹介に徹する道もある(注2)
 分岐点6-3:評論(レビュー)を書く。
 (→一生プロをぼろ糞に貶して終わる(注2)

 創造的/対外的活動といえば、ファンジン。創作をする仲間は大勢いる。創作系ファンジンもたくさんあるが、レベルが向上した成熟期以降の時代では、読むに耐えるもの自体非常に少ない。翻訳はこれまたスキルが必要なので、まじめにするのは少数派。むしろ、既刊本のレビューを書くのがもっとも楽な上に、プロをぼろ糞に貶せる快感も味わえる。でも貶しは麻薬のようなもの。何の建設的反応もなく、いくら書いても誰からも褒められず…。

 分岐点7:(地方/全国)SF大会に参加する。
 (→これだけでは一生安泰ではない
 分岐点8:(地方/全国)SF大会を主催する。
 (→知人と敵を一生分、これまでの人生の数倍作る。友達百人も夢ではない
 分岐点9:ファングループ連合会議に参加する。
 (→団体の主催者となって一生活動する…というのは結構難しい
 分岐点10:ファングループ連合会議を主催する。
 (→以下一生ファン活動に身も心も捧げる、しかない

 大会は1度参加すると、また今度もというパターンが多くて、結果的に平均年齢の上昇、団塊化につながる。まあそんなことはともかく、うっかり主催者側に加担する。SF大会は、エキサイティングである。SFファンが初めて遭遇する喧嘩沙汰でもある。たとえば、町内夏祭りのように誰の利害とも関係がなく、かつ実行委員の純粋な片手間仕事なら、そもそも真剣に対立する要因がないので平穏で済む。でも、SF大会はSF者の人生がかかっている(ように感じる)から根が深い。SF者的には、人生は斜に構えるのがスジなので、当事者になった場合の喧嘩に慣れていない面もある。
 喧嘩度で比較すると、
 SF大会(金銭が絡むと深刻)>
 ファンジン作り(金銭が絡んでも裁判沙汰にはならない)>
 SF論争(プロだと裁判、アマチュアなら洒落)

 うーん、まあ上記の解釈ですが、
 ★コレクターは、簡単になれる(けど、物理的に一生続けられない)コース、
 ★下に行くほどディープな(かつ、精神的に一生続けられない)コース
 といえるでしょう。どちらも続けること自体が困難という意味では、加入年数比例で価値が上昇します(リスクも上昇するでしょうが)。だとしても、途中解約はご損です、たぶん。
  
注:一生結婚しないことが前提条件
注2:でもそんな人は実はいない。貶すのも努力が必要。HPで活動を続けるという手もあるけど、過去のファンジン作家でそういう人もいない。翻訳にしても、いきなりHPの新しい人はいても、古い人は見当たらず。かろうじてレビュー/評論系にいるようだ。

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