みだれめも・出納日記 12年5月

水鏡子


 ※5月はSFセミナーと浜松旅行の月。
 のはずだったのですが、それ以上にエロゲーとデイトレの月になってしまいました。本も満足に読めていません。そんな事情で「みだれめも」どころか、「出納日記」まで落としてしまいました。これを書いているのも6月20日をすぎてからというていたらく。ごめんなさい。記憶がかなり風化して細部がおぼろになってます。時間軸もかなり前後しているかもしれない。

〇4月の結果
 支出計:214,313円。前年4月308,288円
 購入書籍:206冊 36,882円。累計720冊。前年累計518冊
 通算株成績(含み損+売買益):約170万円の損

 前年と比較すると支出は7割に減った。ただしこれには固定資産税の通知が5月にずれたこともあり、実質では15%の減である。パチの好成績もあり1月からの支出累計は65万円。年間支出300万円の枠は悠々達成できそうな気配なので、余力を耐久消費財の購入に振り向けようと思う。購入した書籍は4カ月で前年を200冊上回った。会社勤めのなくなった1-3月の伸びが大きいのだと思うけど、このペースなら今年も累計2,000冊が間違いなさそうだ。
 株の方は3月28日の配当権利確定日で100万円弱の益が出ていたものがわずかひと月で300万円近い直滑降。崩れが予想時期より2週間くらい早く来て結局売りそびれた。権利落ち後の揺り戻しがほとんどないまま欧州不安に飲み込まれたかたちである。

5月第1週
 『ランスクエスト・マグナム』にとりかかる。本体がスケール的に尻すぼみだったので、あまり食指が動かずにここまで来てしまったのだが、追加エピソード集という触れ込みが実際にプレイしてみるとシステムそのものが変わっていることに驚く。全キャラクターの技能に待機10がついたり、入替りのカウントが人数から回数に変わったり。味方キャラのレベルダウンと基礎能力アップを行うモルモンの仕組みも大幅に変更されている。幸福きゃんきゃんの出現位置も固定からランダムに変わっていて経験値の貯金ができなくなった。キャラの育て方が根本的に違ってくる。しばらくは3周目まで回っていた過去のデータを引き継いでプレイしていたが、迷いに迷って週末に初期化。来週すべて1からやり直すことにした。

 SFセミナーの合宿での大森望、まきしんじとの新旧ハヤカワSFシリーズ企画配布用にと昔、THATTA100号に載っけたHSFS刊行データを作り直す※。当時の関係者の手持ちの現物HSFSにあたって収集した可能な限りの重版データである。以前のものは前半150冊くらいのものだったので全冊一望できるものに改めた。A4版1ページに詰め込むため作者名どころか作品名まで略した、ほとんどの人にとって意味不明の表である。しかも現物にあたったものしか書きこんでないから大量にデータが欠落している。ただ、重版データを含めた記録というのは、その年にどれだけのHSFSが書店に並んでいたか、つまり世間にSFがどこまで受容され、SF出版がどこまで軌道に乗ったかを表すバロメーターとして、それなりに意味があるのでないかと思っている。今回載せているので、大量の洩れを埋められるようであればだれか修正したものを作って、ください。

ここに公開しています。

 ということで、SFセミナーである。
 ヒトコマ目の三島浩司インタビューを見る。著者のいう小説のリアルをめぐる少し変わった信念が語られ、くせのある作風について納得が行く。論理を突き詰めると小説美学の否定につながりそうだけど、著者の中ではそれを自身の小説美学として練り込んでいる気配がある。
 昼は三村美衣他10人くらいで東京事情を話しながらの長時間の食事。そのままロビーでだらだらして、結局次に見たのは4コマ目の鹿野司サイエンス。進化論についての最近のSFMのコラムをコンパクトにまとめていて楽しむ。
 終了後サ店を経由して、旅館に。永田さんに声を掛けられ、弁当を頂きながら、スタッフやまきしんじ、鹿野司、各氏らと雑談。市内有数の書店にすらSFMが配本されていなかったという宮崎市に転勤させられた代島氏に半年ぶりで会う。宮崎在住者が東京の集まりでスタッフとして働いていた。
 合宿企画の新旧HSFSの話では、当時は銀背という言い回しはだれもしていなかった、SF文庫で青い背表紙本が出始めて青背白背という区分けがされるようになり、その流れで金背銀背という言い方をするようになったのではないか、といった結論が始まる前に出てしまい、そのまま新SFシリーズ刊行予定刊行希望作の話になる。いちばん深夜の企画だったので、終了後旧HSFSを中心に昔話に突入する。古本極道が集まっていて、やがて定番奇書に関するぐだぐだ話をだらだら。『発酵人間』『楽・奈落』とか『不適応者の群』とかふだんの会話で出ない本の話がぞろぞろ。

 翌日土曜日は解散後、日下三蔵、まきしんじらと2時間近くモーニング。SF初心者に勧めるには分かりやすいSFを、という常識をぼくが否定していたと、まきしんじがツイッターで感心していたけどあれはぼくのオリジナルではない。昔、京フェスのパネルでそんなお勧め本話がされていて『アルジャーノン』や『夏への扉』の名前があがるのを、客席で一緒に聞いていた白石朗が「バースやピンチョンを勧めるために『ライ麦畑』をまず読ませるというのと同じ」と吐き捨てるような口調で斬り捨てたのが発端である。パネルをぶち壊すような公式発言ではなく周りに聞こえる程度のつぶやきだったけど、ぼくもそのときなるほどと感心した。その後、「雑多繚乱・ぞくぞく」で初心者に勧めるSFとして『故郷から10000光年』を選んだときのコメントにそこから発した考えをしたためたことがある。
 そのあと一人で高田馬場へ。ビックボックスの古本市と早稲田の古書街へ。高橋良平先生にHSFSが安く揃っている古本屋があると聞いてかなり歩いていったけど、800円の値付け。サンリオより安いというだけだった。それから五反田のブックオフに寄って、予約していた大井町のホテルにチェックイン。

 ちょっと驚きの出会いがあった。
 古本がかなりの量になっていたので、とにかく部屋に入って荷物を置き、大井町の古本屋を覗くためにそそくさと部屋を出る。身軽になってホテルのビルのエスカレーターを小走りに降りていくと手前に金髪で着流しのおじさんとスーツ姿の二人組が乗っている。脇を通り抜けて降りるとき話し声に聞き覚えがあり振り向くと、今岡・阿部、元SFM編集長の二人組だった。同じホテルに滞在している作家との打ち合わせの帰りだという。なんの意味もなく動き回ったこの場所この時間によくもまあこんな偶然で出くわすとはちょっと感動的だった。大井町の古本屋では昨日の古本談義もあってひさしぶりに千草忠夫を買う。
 晩飯は近所のイトーヨーカ堂に半額商品を拾いに行く。イトーヨーカ堂が高いのか、東京が高いのか、家の近くのスーパーと比較して定価が2割方高かった。

 日曜日。横浜で妹の旦那と会食。その後、横浜のブックオフ、町田のブックオフ、池袋のブックオフを回る。
 途上、雹に出くわす。はじめての経験。帰ってテレビをつけると大竜巻の凄惨映像。雹の降る天気とも連動しているらしい。怖い世の中である。買った古本がかなりの量になり、生まれて初めて宅急便を利用する。

5月第2週
 月曜日。東京最終日。神田のブックオフと秋葉原。ひさしぶりの秋葉原は高層ビルが林立して景色が一変。猥雑さが減じてAKBに合わせたようなすっきりした風景になっていた。
 中古のエロゲーを3つほど買う。東京のブックオフは軒並み単行本が200円になっていて、買う気が削がれたのだが、そんななかで神田は唯一105円で、しかもいい本が並んでいた。
 この店ひとつで相当重量買い込み、後予定していた神保町巡りを断念。時間つぶしにパチ屋に入る。勝つ。新幹線に間に合わせるため途中で切り上げる。神田のパチ屋で勝ったのは初めて。換金所の場所を聞くと教えられないと言われて驚く。留め打ちもできないし、東京はシビアだ。
 負けるつもりが勝った金なので、すこし贅沢。新大阪までの新幹線を西明石までに延長する。
 東京行きで買った本。60冊。ちょっとめぼしいところでは『行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙』『ムーンダークの戦い』『不思議の国のアリス・オリジナル』『出版王国講談社』『されどテレビ半世紀』『天使のとき(佐野洋子)』など。

 この週は東京で買って帰ったエロゲー『DEMONION 魔王の地下要塞』で遊ぶ。復活した魔王を主人公に、次々と送り込まれる女勇者を配下に加え、勢力を拡大していくシミュレーションで、ストーリイもゲーム性もシンプルながら嫌味がない。1週間で2順する。
 週後半にかけて株がさらに下げる。1週間くらいのスパンで三つくらい買えたらいいかと思いながら、10個くらいの指値をする。指値をした次の日に、7つ買えて青くなる。余剰資金がほとんどなくなる。

5月第3週
 不安が的中。買った株がすべて買った値段よりさらに下がる。前々から持っていた株はさらに下がる。18000円で買っていた任天堂は、ついに9000円まで落ちこむ。週末には損失額は年頭の額に戻る。
 冷蔵庫を買う。容量は大幅に増えて、消費電力は以前の半分になる。これまで長らく入れっぱなしにしていて移し替える意味のない素材(5年前の紙パックのジュースなど)を大量に破棄する。
 30年前のブドウの缶詰。開けて一粒舌にのせる。問題なさそうなので食べてみた。漬けてある液体にアルコール味が感じられたのは気のせいか。
 『ランスクエスト・マグナム』を再開する。
 例会の日曜は、6月3日閉店予定の末広書店に。洋書すべて100円ということで、アン・ライスの公式ガイドブック2種など7冊購入。英語なんか読めないのに。

5月第4週
 株価はさらに下がり続ける。いろんな株が年初来安値を更新する。本当の買い目の時期だと思うのだが資金がない。一瞬、預金を解約して一時的に流用することを考えたが、いくら一時的でも資金枠を拡張するのは長期的に見てやってはいけないことだと思う。
 ゲーム会用にエアコンを付ける。量販店にあったいちばん安いやつ。標準工事費付き35,000円だったけど、分電盤その他の付加工事がついて、52,000円になった。

 新聞報道で電力会社の利益がほとんど家庭用から上っていることを知る。真剣に太陽光発電への移行を考える。
 というのも、今回の原発騒動で太陽光発電へ移行する世帯が大量に発生すると思われるから。固定価格買取制度が想定よりもかなり割高で設定され、しかも一度契約すると20年間固定されるという。そうなると、母集団の減った家庭用電力から、従来通りの一定利益を確保しつつ割高の太陽光発電買取額を捻出していくことになり、結局どんどん電力料金を引き上げていくことになる。同時に1単位42円という固定買取価格はかなり早い時期に引き下げられる可能性が高い。移行するなら、ここ2年くらいがベストの気がする。
 問題は、現在実用化間際の有機薄膜パネルの問題で、下手をするとここ数年でこちらに移行し、劇的なプライスダウンと設置量の拡大が見込まれるとかいう話。現在の太陽光パネルは一気に時代遅れになる可能性があるとのこと。しかも、まだ初期段階だから、発電効率面ではまだまだこの先改善されると書かれている。これはちょっと悩ましい。
 へたを打たないよう気をつけながら2年くらいの間に手を打とう。

 週末は恒例の青心社メンバー主体の浜松旅行。浜松在住初村氏による至れり尽くせりの歓待を楽しむ。行きは青心社のZOM氏の車に同乗する。待ち合わせ場所を西宮の古本市場にしたら、意外に入り組んだ場所にあり、合流が大幅に遅れる。浜松到着後、集合まで1時間くらいの余裕があり、3kmくらい離れた市役所近くの古本屋2軒を覗きに行く。グーグルで打ち出した地図をたよりに歩き回りやっとみつけた古本屋さんで地図を見せながら他の店について尋ねると、めちゃくちゃ話好きのおじさんで、いっぱいお話しれくれる。集合時間に大幅に遅れる。楽しい一泊二日を過ごした後、今日も末広書店を覗くため一同と別れて帰路につく。別役実、山口昌男、市川浩などを買う。2日間で38冊購入する。

5月第5週
 じり安を繰り返しながら株損はついに年頭額を超える。暗然たる気分のまま、『ランスクエスト・マグナム』を。期待以上に面白い。追加シナリオもはんぱでなくよい。若干本編とつじつまを合わせ損なうところがあるが、比較的軽い瑕疵。ゲームの遊び方としては、『ランス・クエスト』本編を2周し、そのあと、もったいないけどデータを初期化し、『マグナム』にとりかかるというのがベスト。ただし時間はいっぱい潰れる。

 5月は本は読んだっけ。『デユララ』と『鋼殻のレギオス』の最新刊」、『されど罪人は竜と踊る(1)』、『サイバラバード・デイズ』、わりと駄目なラノベ数冊、コミックたくさん(さすがに100円で買ったコミックは手塚全集以外は一応目を通している)


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