魍魎の匣を探る――水鏡子の新書庫見学会

大野万紀


 昨年から作る作るといっていた水鏡子の新書庫がついに完成し、まだ本はちゃんと整理できていないがとりあえずお披露目会を開くというので、行ってきました。
 2008年に、文庫なら2万5千冊入るという最初の書庫が完成。その写真はこちらにあります。その時もすごいと思ったのですが、それから10年もたたないうちに、今度は庭をつぶして新しい書庫を建設。前は母屋の部屋を書庫に改装したのですが、今回は2階建ての新築書庫です。男のロマンというか、アホというか。ぼくら凡人には口にする言葉もありません。最終的には10万冊が収納できるという、個人の書庫としてはとんでもないスケールで、業者が、こんなものは初めて作ったのでぜひパンフレットに載せさせてほしいといったとか。図面などはここにあります。
 朝はよく晴れていたが、天気が急変するかもという予想の、4月29日、昼過ぎに最寄り駅に集合した、THATTAのメンバーと神戸大SF研OBのメンバー、のどかな田園風景の中を歩いて行くと、昔ながらの古い普通の住宅地の中に、忽然とそそり立つ窓のない異様な白い匣。これが書庫だ! まさしく、老境に入ろうとする独身オタクの建てた「魍魎の匣」そのものです。家族もちには無理ですよね。近所づきあいは気を遣っているとのことですが、知らない人が見たら、マッドサイエンティストの研究室か、悪の秘密結社みたいで、とても不気味です。
 すでに青心社のメンバーが来ていて、前の庭にテーブルを置いてにぎやかにしていました。中に入ると、狭い通路をはさんで両側に部屋いっぱいの移動式書架が並び、数人が入るともう身動きできない状態です。写真も撮りにくくて、全体像は撮せません。元の書庫などにあった3万冊ほどの本をとりあえず収納しただけで、まだまだ整理はできていないということですが、写真を撮ったのでここに掲載しておきます。写真をクリックすれば、大きく表示されます。
 とりあえず並べただけということで、よく見ると変な並びが多く、訪問者の中にはさっそく本を並び替えようとする人も出てきます。そんな部分的に並び替えても意味ないのですが。
 それにしても、3万冊ほどを入れても1列で、背表紙が全部見えて、まだ棚がいっぱい余っている! 信じられないというか、自分の部屋を思うとちょっと(いやかなり)腹立たしい風景じゃありませんか。
 そんなみんなの「呪い」のせいか、書庫の中に入るや猛然と雷が鳴り響き、外は荒れ模様に。でも帰るころには晴れ上がり、呪いも祓われたみたいです。良かった良かった。

これが書庫だ! 普通の住宅地にそびえる
白亜の匣
入り口は一見
普通の家のよう
もし何かあったら、この非常ベルが鳴る
中はこんな感じで
移動書架がぎっしり
アメコミが一棚いっぱい ここらは古い洋雑誌
中段にはハングルの本も
文庫本が並んでいます 小説は基本、作家別に
並べるとのこと
ハードカバー ハヤカワSFシリーズ SF評論やリファレンス類 ここは〈本の雑誌〉がひと揃い
古いペーパーバックが
並んでいます
こっちも。自分では
読まないはずなのにね
〈SFマガジン〉の棚
古いものはビニールに
同じく〈SFマガジン〉
新しめのやつ
〈SFアドベンチャー〉や
〈奇想天外〉
〈ミステリマガジン〉も
揃っています
コミックの棚はまだまだ
未整理とのこと
ここもコミック 最近増えた「なろう系」 まだまだあります
コバルト文庫 ハードカバーの児童書 全集など堅めの本 自然科学関係もあります
山田風太郎は
水鏡子の原点です
2階へ行く階段
狭くて急で、ちょっと怖いです

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